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甚だ気になる漢字「官」の誤用②…神官

 2017-07-12
甚だ気になる漢字「官」の誤用②

…神官



私たち日本人でも、神社をお護りする神職員を何とお呼びしたら良いものか、
神主(かんぬし)さん、或いは宮司(ぐうじ)さんとお呼びするのは正しいので
あろうかと迷うことはなかろうか。
「神主」には「神憑りに於いて、ご神意を人に伝える媒介者」との意味合いがあり、
「宮司」は「神社の長(おさ)」という職階を意味し、神社の規模に依っては、
宮司の許に「権宮司(ごんぐうじ)」「禰宜(ねぎ)」「権禰宜(ごんねぎ)」等の
職階の方々が居らっしゃる。
従がって、神社で神々にお仕えする職員を総称して、「神職(しんしょく)」と
お呼びするのが適当であろうと思われる。
この神職の呼称に関して、私が極めて驚くべき現象であると考えるのが、
「神官(しんかん)」という呼称が現在でも用いられていることである。


第92記事1


律令体制下に在った我が国の古代、7世紀頃から、朝廷の宮中祭祀や神社の管理は
「神祇官(じんぎかん)」という官庁の高級官僚に依って行なわれていた。
長官である神祇伯、次官相当の神祇副、その下位に神祇祐、神祇史、伴部
(神部、卜部)等の役職が置かれていた様であるが、これ等の祭祀貴族は
当に「神官」であった。

因みに、「神祇」とは「天神地祇(てんじんちぎ)」の略で、「神」は天津神
(あまつかみ)である「天神」を、「祇」は国津神(くにつかみ)である「地祇」
を表わし、全ての神々を意味する。


平安時代にまで時代を遡るが、神社にはそれぞれ、定められた社格(神社の格式)と
いうものがある。
朝廷から幣帛(へいはく=神への捧げ物)が奉献される神社を「官社」と称し、
その内、神祇官が管轄する神社が「官幣社(かんぺいしゃ)」で、国司(中央から
派遣された地方の行政官)が管轄する神社を「国幣社(こくへいしゃ)」と称する。
平安時代に定められた「延喜式神明帳」に依れば、神祇官管轄下の官幣社は
573社、国司管轄下の国幣社は2288社、計2861社の官社が在った。
因みに、この延喜式神明帳に記載された2861社の神社を「式内社(しきないしゃ)」と称する。
当然の事ながら、我が国第一の宗廟たる神宮(伊勢神宮の正式名称は「神宮」である)は
天下無双の聖地、最高位の神社として、別格扱いである。


第93記事2平城宮跡第一次太極殿正殿
平城宮跡第一次太極殿正殿
※ 画像は、文化庁様のHP依り、拝借。


明治元年(1868年)、明治維新で新政権を樹立した明治政府は、神仏分離令を布告。

明治2年(1969年)、明治新政府は、神道を国家統合の精神的支柱にすべく、
古代に於いて、朝廷の宮中祭祀や神社管理を司っていた神祇官制度を約1000年振りに
復活させた。

明治4年(1871年)、官職のトップに在った神祇官を廃止し、太政官所管の
神祇省とした。

明治5年(1872年)、神祇省を半年で教部省と改称。

明治15年(1881年)、明治政府に依り、神官は祭祀以外の一切の宗教活動を
禁じられる。
神道は宗教を超えた、民族の伝統精神の根幹として、神社神道は国家の宗祀と
位置付けられ、内務省の管轄下に置かれた。所謂、国家神道なるものである。

国家管理体制下の神社は、社格を「官社(官幣社、国弊社)」と「諸社(府県社、
郷社、村社、無格社)」に分類された。

全ての神社は国家及び地方公共団体の管理下に置かれ、官社は神祇官の管轄下、
「民社」である諸社は地方官の管轄下に在り、官社の神職は国家公務員、諸社の
神職は地方公務員扱いであった。
従がって、官社に奉職する神職は、当に「神官」と称すべき存在であった。


第93記事1


大東亜戦争敗戦の年、昭和20年(1945年)の12月、占領軍のGHQ(連合国軍
最高司令官総司令部)の命令、「国家神道、神社神道ニ対スル政府ノ保証、支援、
保全、監督並ニ弘布ノ廃止ニ関スル件」(所謂、神道指令)に依って、国家管理の
神社制度が崩壊。
こうした経緯から、神社は国家管理から解き放たれ、一般の宗教法人として、
扱われることになった。
従がって、昭和20年(1945年)12月以降の我が国には、「神官」は一人として
存在しないのである。

戸籍法 第十五節「氏名の変更 」第百七条の二に、
「正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、
その旨を届け出なければならない」とある。
家庭裁判所が、この名の変更の許可要件である「正当な事由」を判定する場合、
「昭和23年1月31日民甲第37号最高裁民事部長回答」が現在でも有効であるが、
この中で挙げられている具体例の一つに、「『神官』若しくは僧侶となるため、
又はこれを辞めるために名の変更が必要であること」という記述がある。
この最高裁判所民事部長の回答は、昭和23年(1948年)1月に示されたものであり、
GHQの神道指令が発令され、国家管理の神社制度が崩壊し、「神官」と称すべき
神職が存在しなくなった、昭和20年(1945年)12月以降の文書である。
「神官」という言葉は、法律用語に厳正である法曹界の秀才でさえもが、
ついうっかり用いてしまう程に誤用が多い。
最近では、或る国会議員の「〇〇神社の神官が云々」との発言を聞いて、
驚き入った次第である。


第92記事4 

漢字「官」の乱用の甚だしき言語状況には、実に驚くべきものがある。


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甚だ気になる漢字「官」の誤用①…指揮官,教官,警察官,消防官, etc.

 2017-07-02
甚だ気になる漢字「官」の誤用①

…指揮官,教官,警察官,消防官, etc.



スポーツ記事等で、記述者が野球やサッカーのチームの監督を「指揮官」と
表現する文章をよく見掛ける。
殊に、剽軽気味で軽妙なタッチの文章が好まれるのか、スポーツ紙の記事では、
成績好調な野球チームで出塁率の高いトップバッターを「斬り込み隊長」で
あるとか、絶対的な抑えのピッチャーを「守護神」と表現するのであるから、
比喩として、チームの指揮を執る監督を、国軍や警察の部隊の「指揮官」に
擬えて表現することは理解出来る。
しかし、記述者がこの「指揮官」との表現を飽くまでも「比喩」であるとは、
充分に自覚した上での執筆ではないのではなかろうかと思われる文章も多い。


第92記事1


言うまでもなく、漢字「官」とは、「官に就く」、「官を辞す」との言語表現が
ある様に、「役所」「官庁」「公務」「役人」「官吏」「公」「朝廷」「政府」等を
意味し、「身分の高い役人」の意味であれば、対義字は「吏(身分の低い役人)」
であり、「公」「行政機関」の意味であれば、対義語は「民」である。

「指揮官」に就いて言えば、スペイン語で「コマンダンテ・チェ・ゲバラ」
(チェ・ゲバラ司令官)という呼称があるが、キューバ軍のチェ・ゲバラ少佐の
立場である時は確かに「指揮官」「司令官」であるが、政権を奪取するキューバ
革命以前、或いはキューバを去り、ボリビア政府軍と戦った、ゲリラ隊長としての
チェ・ゲバラに、官吏としての意味を持つ「指揮官」「司令官」を冠するのは、
日本語としては正しくない。
軍隊に於いて、「指揮官」とは「国軍」「政府軍」の部隊指揮者を意味する。
国家を持たぬ反政府軍の指揮者を「指揮官」と呼称するのは誤りである。


第92記事2
※画像は、イラスト素材無料提供サイト「イラスト・ポップ」様依り、拝借。


また、民間企業の経営者や管理職に対しても、「指揮官」と比喩表現することがある。
指定自動車教習所の指導員をみなし公務員と認識している所為か、「教官」と
呼称したり、民間企業の採用面接の担当者を「面接官」と呼称したりする等は、
ごく当たり前のことと成っている様であるが、実に奇妙な言葉遣いである。

漢字「官」の意味を厳密に捉えれば、「警察官」、「消防官」の語ですら誤用と言える。
我が国の警察機構は、昭和29年(1954年)の警察法改正で、国家の警察行政
機関として、内閣総理大臣の所轄の下、国家公安委員会が管理監督する警察庁と、
各都道府県警察に警察本部(東京都は警視庁)が設置され、今日に至っている。
都道府県警察は、都道府県公安委員会の管理下に置かれる都道府県の機関で
あることから、その職員は地方公務員であり、官吏ではなく、公吏である。
従がって、本来は都道府県警察の職員を「警察官」と呼称するのは正しくない。
但し、都道府県警察の職員の内、警視正以上の階級にある職員は「地方警務官」
として、国家公務員であるから、正に「警察官」である。

現在、都警察である警視庁が、高度な専門的知識や技術を有する「特別捜査官」を
募集している。
その募集要項には、「財務捜査官」「科学捜査官」「サイバー犯罪捜査官」を
幹部警察官として登用するとあるが、本来であれば、その階級が警視正以上の
「地方警務官」でなければ、国家公務員ではなく、「捜査官」と「官」の文字を
用いるのは正しくない。


第92記事3
※画像は、イラスト素材無料提供サイト「素材のプチッチ」様依り、拝借。


「消防官」の呼称もまた然り。
平成13年(2001年)の中央省庁再編に依り、消防庁は総務省の外局と相成った。
総務省消防庁の職員は国家公務員であるから、官吏である。
我が国の消防組織は、市町村単位の体制で、自治体消防(市町村消防である。
東京都の場合は、東京消防庁が島嶼地域と多摩地域の一部(稲城市)を除く、
東京都のほぼ全域の消防防災業務を担っている。
従がって、自治体消防の職員は地方公務員の消防吏員であって、「消防官」と
呼称するのは正しくない。


因みに、地方自治体の公務員が、予算や補助金を巡る協議・折衝の際、有利に
事が運ぶ様に、公費を用いて中央省庁の官僚に飲食等の持て成しを行うことを
「官官接待」と表現するが、官吏同士の接待ではなく、官吏と公吏間の行為で
あるからして、これは本来、「官公接待」と表現すべきである。


第92記事4 

漢字「官」の乱用の甚だしき言語状況には、実に驚くべきものがある。



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