華やぐ日々よ …詠山史純の愚考拙文録 2011年01月

空母機動部隊 …中国の憧憬と幻想

空母機動部隊 

…中国の憧憬と幻想


中国軍大佐

中国の軍事戦略研究家という戴旭大佐は
『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙の取材に応え、
「空母はもはや兵器という概念を越えて、すでにわれわれの民族の
 心の中に融け込んでいるものである」
「原子爆弾が中華民族の尊厳を表すものであると言うならば、
 空母はその夢である」
「空母建造は数世代の中国人がずっと追い求め、臥薪嘗胆して
 目指してきた夢だと言える」と語っている。
何とも異様な内容の、恐ろしく下手糞な文芸的表現である。

中国政府は公式に空母建造計画を発表していないはずだが、軍関係者や
軍需産業管理機関である国防科学技術工業委員会のメンバーなどは
「中国が永遠に空母を持たないというわけにはいかない」
「関係部門は空母の保有を真剣に研究、検討している」と語り、
2020年を目処に6万tクラスの通常型空母3隻を建造したい、
また、その後は同規模の原子力空母2隻を建造したいと、
将来の空母保有について、積極的な姿勢を表明している。

1970年代、中国はイギリスから1.8万t級の小型空母と長大な
飛行甲板を必要としない垂直離着陸艦載戦闘機ハリアーの購入、
或いは、イギリスの技術協力で空母建造の計画はあったのだが、
イギリス側のオファーが高過ぎたことによって、断念している。
現代中国は好調な経済発展を背景に、費用面での障害はないはずだが、
肝心な空母造艦技術の不足で、技術的なハードルをクリア出来ず、
未だに船体の建造すら侭ならないようである。
中国は焦燥感を露わにして、この空母建造技術の収集の為に、形振り構わぬ
醜態を演じ続けているというのが実状なのである。

1980年代中頃、中国はオーストラリア海軍の退役空母メルボルン
(旧イギリス海軍船籍名マジェスティック、基準排水量2万t)をスクラップと
して購入、解体調査して、構造や設備の技術データを収集したという。

1990年代中頃には、ロシアからキエフ級空母(基準排水量4万3千t)
キエフとミンスクの2隻をやはりスクラップ名義で購入し、解体調査。

1998年には、ソ連崩壊後、ウクライナのニコライエフ造船所で船体の完成度
75%の状態のまま、建造中止となっていたワリヤーグ(排水量5万8千t)を
中国情報機関が設立したダミー会社、マカオの観光会社(社長は中国情報機関
の退役大佐)が、船体をカジノや劇場などを持つ洋上の5つ星ホテルに改装する
という虚偽の名目で2,600万$で購入したという。
契約内容では、同艦を軍事目的で再生する事を禁じていたそうだが、
ワリヤーグを購入した観光会社は、同艦が中国の大連に到着するや否や、
そのダミーの役割りを終え、霧消してしまった。
現在、ワリヤーグを所有しているのは大連造船所の系列会社であるが、
大連造船所は国営企業のため、「施琅」という艦名で同艦は事実上、
中国海軍の管理下にある。

ワリャーグ400

2002年から2005年まで解体調査の上、その後、再生作業が行われたという。
2009年には大連の埠頭に停泊していたワリヤーグが、5km西側にある造船会社
「大連船舶重工」の専用ドックに入渠したのが確認されている。
ロシアからは同艦の設計図面や技術図、資料も全て購入している。
また密かにロシアから、設計段階で建造計画が中止されたウリヤノフスク級
原子力空母の設計図も入手しているという。

しかし、幾ら中国が艦上戦闘機用航空母艦の船体や機関をコピーすることが
可能になったとしても、空母に不可欠なレーダーなどの電子機器装備、
戦闘管制システム装備や各種兵装、カタパルト(空母甲板から艦載機を射出
する為の装置)などの航空機運用に関する装備など、ハイテク技術の開発は、
猿真似だけで出来るものではない。
2006年に、着艦拘束装置をロシアから購入したとの報道はあったが、
その他の装備の輸入は侭ならないようである。

艦上機についてもコピー大国に相応しく、ウクライナからT-10K
艦上戦闘機を輸入して、艦上機開発に必要な技術の収集しているとのこと。

中国海軍はウクライナのオデッサ海軍航空隊訓練センターの協力を得て、
パイロット要員の訓練の技術導入を図っているようである。
陝西省西安にある閻良飛行場では航空母艦のスキージャンプ甲板を模した
施設が建設され、離陸実験が行われていることは衛星写真で確認されている。

※ 艦上機(かんじょうき)と艦載機(かんさいき)の定義について
「艦上機」は、航空母艦に搭載され、飛行甲板から発着艦可能な航空機をいう。
「艦載機」は本来、航空母艦以外の艦艇、戦艦や巡洋艦などに搭載される
水上機を指すが、現代では厳密に区別されることなく、本来は艦上機と
すべきものを艦載機と表現している場合が多い。

しかし、たとえ船体としての空母を完成させたとしても、それを中核として
空母機動部隊を戦力として有効に運用する為には、艦上機の調達から航空部隊
搭乗員の養成、洋上飛行のシステム構築、空海一体の戦闘システムの構築、
高性能レーダーの実装や戦闘指揮管制システムの構築、システムを運用出来る
空母要員の養成、潜水艦や駆逐艦など水上艦艇群から成る空母護衛部隊の編成…
と広範な分野に渡り、高度な技術を要するシステムを構築する必要がある。
そもそも、旧ソ連海軍空母機動部隊自体に実戦経験が無いのであるから、
ウクライナ海軍の全面協力を得たとしても、その技術レベルは高が知れている
という訳である。

鳳翔400

設計段階から航空母艦として起工され、世界で初めて竣工した正規空母は、
我が国の空母「鳳翔(ほうしょう)」であったことを知る人は、日本でも
少ないのではなかろうか。
大正8年(1919年)12月、浅野造船鶴見造船所にて起工、大正10年(1921年)
11月、進水、艤装工事は横須賀工廠で行ない、大正11年(1922年)12月竣工。
基準排水量7470t、全長168mであったという。
艦上機の着艦テストは大正12年(1923年)に東京湾上で行われ、イギリス人の
テストパイロットが操縦する十年式艦上戦闘機が、世界初の空母着艦に成功。
我が国は、ライト兄弟の初飛行から僅か20年程で、艦上戦闘機用の航空母艦を
世界に先駆けて完成させているのである。

日本海軍はアメリカ、イギリスと共に三大海軍国として、太平洋戦争時には
両国と比較して何ら遜色のない、充分に訓練された艦隊型空母部隊を保有、
運用していたのである。
鳳翔、赤城、加賀、翔鶴、瑞鶴、龍驤、蒼龍、飛龍、大鳳……と実戦配備
出来た艦上戦闘機用空母は十数隻であったようである。

艦上機群400

史上初の空母機動部隊同士の海戦は、昭和17年(1942年)5月に日本艦隊と
アメリカ艦隊(オーストラリア海軍も参戦)とで戦われた珊瑚海海戦であり、
日本海軍の損害は軽空母1隻、アメリカ海軍に与えた損害は正規空母1隻であった。
戦術的には日本海軍の勝利であったとされるが、日本海軍機動部隊は航空機や
優秀な搭乗員を多数消耗し、その後の戦局に甚大な影響を及ぼしたとされる程に
多大な損害を被った。

その後も、昭和17年(1942年)6月 ミッドウェー海戦(日本の敗北)
同年8月 第二次ソロモン海戦(日本の敗北)
同年10月 南太平洋海戦(日本の勝利 )
昭和19年(1944年)6月 マリアナ沖海戦(日本の敗北)
同年10月 レイテ沖海戦(日本の敗北 )と
日米の空母機動部隊が正面から激突した壮絶な海戦が戦われたのである。



ここで特筆すべきは世界戦争史上、正規空母同士の戦い、つまり空母機動部隊
同士の海戦は、日本とアメリカとの間でしか戦われていないということである。
現在、空母を保有している国々はアメリカ、イギリス、フランス、ロシア、
ブラジル、タイ、イタリア、スペイン、インド であるようだが、アメリカ海軍
以外は空母機動部隊運用の実戦的なノウハウを持っていないということである。
実戦経験の無い海軍がどう足掻いても所詮、その戦闘システムは机上の空論で
しかないのである。

正規空母は圧倒的に戦力格差のある弱小国に対しては、絶大な効力を発揮するが、
戦力の拮抗した国家間の戦争に於いては所詮、海上に浮かぶ城郭として、
沈没させられる運命にある。
日米空母決戦以降、米ソの空母機動部隊同士の衝突が起こることもなく、
空母も所詮は消耗艦船であるという実証が示されることもなかったが為に、
超軍事大国のアメリカ海軍に手を出す国家があるはずもなく、その間に
正規空母への絶対的な戦力過大評価が膨らんだだけのことである。



敵軍の有効射程距離外で、敵機動部隊を駆逐するシステムが有効に機能しない
限りに於いては、穴を空けられた鉄の箱船として海の藻屑と消えるのは
自然の理である。
特に対艦ミサイルの性能が向上した現代に於いては所詮、筏同様の海に浮かぶ
滑走路に過ぎず、間の抜けた軍艦として、消耗戦の渦中に投げ出されるに違いない。
それを実体験で充分に認識しているのは、海上自衛隊とアメリカ海軍だけである。

空母保有は大国のステイタス、中華民族の見果てぬ夢として、大いに逆上せ
上がって、気を吐いている割には建造計画の進捗状況が恐ろしく遅れている
中国などには、想像だに出来ない哀しく虚しい現実なのである。



海上自衛隊に配備されている「ひゅうが型護衛艦(ひゅうががたごえいかん)」は
全長198m、最大幅33m、基準排水量1万3950tの空母型ヘリコプター搭載護衛艦
である。一番艦「ひゅうが」は就航中、二番艦「いせ」は艤装中。
基準排水量1万3950tはイタリアやスペインの軽空母に匹敵し、「ひゅうが」は
ヘリ空母であるが、日本には艦上戦闘機用軽空母建造の技術があるという証明で
あると話題となり、中国には日本が既に空母を保有しているかのように認識して
いる向きもあるそうである。

防衛省は更に、このひゅうが型護衛艦の機能を大幅に向上させ、艦首から艦尾まで
甲板がつながる「空母型」(甲板の端から端まで離着陸の障害物がない甲板を
「全通甲板型」と言う)で、最大規模のヘリコプター搭載護衛艦(基準排水量
1万9500t)1隻の配備方針を決定している。

護衛艦ひゅうが400

この「ひゅうが型護衛艦」完成のニュースに対する中国ネットユーザーの
反応が面白かった。
「日本軍による第2空母完成。中国の空母はまだか?」
「中国空母建設支持!日本は危険だ。作るといったら、
 あっという間に作ってしまう。中国も急ぐべき」
「日本は無言実行、中国は有言不実行」
「日本の造船技術は中国と比べても遜色がない。
 ヘリコプター搭載護衛艦となれば、日本を侮れない」

※ 遜色がないどころか、日本の造船技術は世界一であることを
中国人は知らないのである。こういうところでも中華思想を
ぶちかますとは、漢人はどこまでお馬鹿さんなのだろうか。
90年も昔、世界初の正規空母を建造した我が国を相手に
身の程知らずも甚だしいものである。

早く中国建造の空母を見てみたいものだと思う。
オーストラリアから退役空母メルボルンをスクラップとして購入し、
空母甲板から艦載機を射出する為の装置、カタパルト(射出機《しゃしゅつき》)
の研究をしたということだが、未だに国産カタパルトの実用化には至っていない
ということからすると、ウクライナから購入した「ワリャーグ」同様、飛行甲板
にはスキージャンプ台のように傾斜を付けた、垢抜けしない、薄見っとも無い
形状の船体であるに違いない。
軍艦と言えども、旧日本海軍の艦艇のように美しくなくてはいけない。

カタパルト300



スポンサーサイト

テーマ : 歴史雑学 - ジャンル : 学問・文化・芸術

2011/01/23 08:10 | 支那関連COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

 | BLOG TOP |  NEXT»»