華やぐ日々よ …詠山史純の愚考拙文録 2012年11月

国防軍創設論議 …要は自衛隊の法的環境整備問題

国防軍創設論議は焦点を外していないか? 

…要は自衛隊を取り巻く法的環境整備の問題



自由民主党が衆院選に向けた政権公約の中で、憲法第9条を改正し、自衛隊を
「国防軍」とする方針を掲げたことに依って、国防軍創設論議が喧しい。

自由民主党の政権公約
「日本国憲法改正草案」の主な内容に於ける「第2章安全保障」に付いて
「●平和主義を継承するとともに、自衛権を明記し、国防軍の保持を規定。
 ●領土の保全等の規定を新設」とある。


自由民主党総裁の安倍晋三氏は、「自衛隊をきちんと軍として認め、その為の
組織も作り、海外と交戦する時には交戦規定に則って行動する。
シビリアンコントロール(文民統制)も明記する」と語り、自衛隊を国防軍に
する場合は、戦闘時の武器使用基準などを定めた交戦規定を整備する考えも
表明した。
自由民主党は今年4月に発表した憲法改正草案でも、戦力の不保持と交戦権の
否認を定めた日本国憲法9条2項を、集団的自衛権の行使を容認する表現に
改正する方針を示している。


国旗掲揚500


大東亜戦争敗戦の昭和20年(1945年)、日本の政治機構をそのまま利用して、
間接統治の占領方式を実施していた連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が、
大日本帝国の解体と戦力不保持、交戦権否認の法制化で日本を無力化する目的
を果たす為、憲法に関する学識の無いGHQ民生局のアメリカ軍人、軍属達が
学生の研究発表かレポート作成でもあるかのような参考資料の寄せ集め方式で、
僅か一週間の作業で仕上げた、間に合わせのマッカーサー即席翻訳憲法である
日本国憲法を日本人自身が議会での論議を経た上で、改正案を可決した後に
改正して、何処に不都合があると言うのであろうか。

日本国憲法第9条第1項「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または
武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久に放棄する」
第2項「前項の目的を達するため、陸海軍その他の戦力は保持しない。
国の交戦権は認めない」
中国や北朝鮮、韓国、ロシアが「平和を愛する諸国民」(日本国憲法前文)に
相当せず、日本国民が「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの
安全と生存を保持しようと決意した」などと戯言を言ってはいられない極東情勢
の中、この非現実的な戦力不保持と交戦権否認を定めた第9条第2項の表現を
削除し、集団的自衛権の行使を可能とする表現に置き換え、「国防軍を保持する」
と明記する憲法改正案は至極妥当性を持つ。


陸自A


日本国憲法第9条を改正し、自衛隊を国防軍に改編するという方針を掲げた
自由民主党政権公約に対しての各党党首の発言が余りにも稚拙で情けない。

民主党の野田佳彦首相は、「名前を(自衛隊から国防軍に)変えて、
中身が変わるのか。大陸間弾道弾を飛ばすような組織にするのか。
意味が分からない」と述べ、日本維新の会の橋下徹代表代行は、
「(自衛隊の)名前を変えるのは反対だ。国民的な反発を買うような名前に、
自衛隊員も拘りはないだろう」と述べた。 
公明党の山口那津男代表は、「定着した名称をことさら変える必要性はない」と
述べ、日本共産党の志位和夫委員長は、「海外でアメリカと一緒に戦争をやる
国に日本を作り変える動きだ」と批判した。
海外どころか、国内でも非常時に平時の一般法令の制約を受ける現行の法体系の
下では、自衛隊はまともな戦闘行動が取れないのであるが、それは後に記す。


レンジャー訓練500


一般国民に至っては、「国防軍」より「自衛軍」が良い、「防衛軍」が良い、
果ては、「極東解放軍」だの「地球防衛軍」だの「ウルトラ警備隊」だのと、
そもそもネーミングがどうのこうのという、単なる名称変更の問題ではない
ことはご存知のはずと思うのだが、面白い発言を為さる方々がいらっしゃる。

自由民主党の政権公約にある「国防軍」は固有名詞ではなく、普通名詞である。
古風であるが、単に「国軍」と表記しておいた方が誤解を生まずに良かった
のではないかと考えている。

名称としては、
「日本陸軍」Japanese Army
「日本海軍」Japanese Navy
「日本空軍」Japanese Airforce
と、要するに「日本軍」とすれば良いだけのことである。


「自衛隊」の英語名は「Self-Defense Force」である。

陸上自衛隊
Japan Ground Self-Defense Force
(JGSDF)

海上自衛隊
Japan Maritime Self-Defense Force
(JMSDF)

航空自衛隊
Japan Air Self-Defense Force
(JASDF)


多くの国々の軍隊が「National Defense Force」「National Guard」
「State Guard」と、「国防軍」を名乗っている。
そもそも何れの国も自衛権を法的根拠として、軍隊を保持している訳で、
法的に「他国侵略軍」と規定している軍隊など無いことから、自衛隊の様に
敢えて「Defense」に「Self」の語を冠する必要など無いのである。
一般用語としての「Self-Defense」は自己防衛、正当防衛の意味で、自分を
侵害する者に対しての、切迫した状況下に於ける正当な護身の反撃ということに
なるが、軍事用語の「Self-Defense」は、敵対行為や敵対的意図から自軍の安全
を確保する為に、積極的な戦闘行動は行わず、差し迫った敵対戦力からの脅威
を排除する必要に立ち至った場合にのみ、その目的を達成する為に必要な範囲
を超えない規模の戦力を行使する状態を意味する。
これを部隊レベルに当て嵌めれば、窮地に陥っている他の部隊を見殺しにして
でも、援護するなどの積極的な戦闘行動は行わず、自分の部隊が攻撃された時
にのみ、反撃する状態ということになる。


空挺隊500


自衛隊の行動は、「自衛隊法」「防衛省設置法」の「防衛二法」に依って、
規定されている。
自衛隊海外派遣に関しては、日本政府が海外派遣発令のその都度、自衛隊の
作戦行動の根拠法を時限立法で個別に成立させ、応急措置的に対処している。

平成13年(2001年)9月に発生したアメリカ同時多発テロ事件の報復として、
アメリカ軍が開始した対テロ戦争の後方支援の為、2001年11月に海上自衛隊の
艦船3隻がインド洋に派遣されたが、その根拠法は、「平成十三年九月十一日
のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われ
る国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する
措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」と、
112文字もの妙に長ったらしい名称の法律であった。
略して、「テロ対策特別措置法」と呼ぶ。

多国籍軍に依るアフガニスタン進攻作戦が開始され、平成13年(2001年)
から平成22年(2010年)まで、海上自衛隊の補給艦と護衛艦が多国籍軍艦艇
への給油活動の為、インド洋に派遣されたが、その根拠法は「テロ対策特別
措置法」及び「テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する
特別措置法(新テロ特措法)」であった。

また、平成15年(2003年)から平成21年(2009年)までの自衛隊イラク
派遣の根拠法は、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動
の実施に関する特別措置法」(イラク特措法)であった。

現在も継続中であるソマリア沖海賊の対処活動の場合、平成21年(2009年)
3月、先ずは自衛隊法第82条の「海上警備行動」を発令し、海上保安官を同乗
させた上で、海上自衛隊の護衛艦2隻を派遣、2009年6月に「海賊行為の処罰
及び海賊行為への対処に関する法律(海賊対処法)」を成立させ、新法施行の
7月以降は、自衛隊派遣の根拠法を「自衛隊法」から「海賊対処法」に切替えて、
ソマリア沖当該海域で警備行動を行っている。

このように、まるで建て増しを繰り返す温泉旅館のように、自衛隊の作戦行動
の法的根拠とする個別法をその場、その場の間に合わせで増殖させて誤魔化し、
時限立法で自動的に失効するとは言え、複雑化の一途を辿るばかりである。


市街戦500


絵空事のマッカーサー憲法を根本とする既存の法制度が、自衛隊が対応すべき
国土防衛の実態に即していないことは明々白々である。
自衛隊は「ポジティブリスト」に規定されている行動規範に則して、活動する。
「ポジティブリスト」に依る法規制とは、「原則として、総べて禁止とするが、
認可するものだけを一覧表とする」ことに依って、規制を行なう方法である。
逆に、「ネガティブリスト」に依る法規制とは、「原則として、総べてを認可
するが、禁止するものだけを一覧表とする」方式である。

要するに、「ポジティブリスト」は、「やって良いことを規定する」もので、
「ネガティブリスト」は、「やってはいけないことを規定する」ものである。
従がって、自衛隊は一事が万事、やって良いことが法律で規定されていて、
それ以外の行動は許されない。
諸外国の軍隊は「ネガティブリスト」に依る行動規範に依って、戦闘行動をする。
国際法の枠内であれば、禁止されていること以外は、何をやっても良いことに
なっている。
「ポジティブリスト方式」の自衛隊が、「ネガティブリスト方式」の侵略軍に
対し、適切に対応した作戦行動を取ることは難しい。


実弾演習500


その上、有事法制が不充分であるが故に、非常時に際しても、自衛隊の戦闘
行動は平時の一般法令の制約を受けるのである。

陸上自衛隊の戦闘部隊が迎撃の為に、武力侵攻を受けた現地に向かう際にも、
警察に誘導され、一般交通法規を厳守しながら、移動するのである。
戦地に向かう戦車や装甲車、軍用車両が非常時でありながらも、一般道路では
信号を守り、一方通行路は逆走出来ず、斜めに田畑を突っ切れば早いものを、
それも出来ずに正直に遠回りしてくの字に曲がり、夜間はライトを点灯する。

戦地で塹壕を掘るにも、先ずはその土地の所有者に、地面に穴を掘っても良い
ですか?と許可を取り、更に当該地方自治体や国の許可を得なければならない。
戦闘行動中でも民家に立ち入る権限が無いことから、敵兵から遮蔽物に身を
隠すのにも、その場所が私有地であれば、その土地の所有者に、立ち入っても
良いですか?と許可を得なければ、敵前で身を曝し続けることになる。
市街戦では通常、敵兵が潜んでいる可能性のある建物一軒一軒に立ち入って、
掃討して行くのが鉄則であるが、合法的にはそれは出来ない。
ましてや、建物内部に手榴弾を投擲するなど、論外ということになる。

敵兵から攻撃を受けても、上官から応戦の許可を得なければ、射撃出来ない。
発砲出来ないどころか、実弾を詰めた弾倉を小銃に装着することも、初弾を
薬室に装填することさえも、上官の許可が要る。
応戦許可の要請を受けた現地指揮官は、陸上幕僚監部か防衛省に連絡し、
武器使用の許可を得て、初めて部下に射撃を下令する。
機関銃射撃や手榴弾使用までも一々許可を得る必要がある。
小銃を携行していても、自分の命が究極の危険に曝されようとも、現実には
敵兵に向けて実弾を発射することは法的に許されない。
侵略軍から祖国を守る為であっても、敵兵を銃撃すれば、殺人罪や傷害罪に
問われることになるのが日本の現状なのである。
これでは、非常時に自衛隊員が個々の判断に於いて、超法規的な戦闘行動を
取ったとしても止むを得ないことになる。
合法性を確保する為には、戦闘時の交戦規定整備は必要である。


陸自 災害派遣F




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テーマ : 歴史雑学 - ジャンル : 学問・文化・芸術

2012/11/29 05:34 | 憲法COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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