華やぐ日々よ …詠山史純の愚考拙文録 虚妄の仏教④ …虚構の大義

虚妄の仏教④ …虚構の大義

虚妄の仏教④ …虚構の大義



釈尊を開祖とする仏教は、インドで部派仏教から大乗仏教へと
大きな質的変化を伴いながら展開し、原始仏教経典から
大乗仏教経典まで、様々な思想系統の経典が、その内容や教義が
体系化されないまま、混沌たる無秩序な状態で中国に流入した。

それらの経典群は余りにも多様化していて、相矛盾するような
内容の教説が各々、これぞ釈尊の教え、仏説と主張している訳で
あるから、その中の一体どこに、釈尊の真実の教えがあるのかと、
仏教徒達が戸惑いを見せたあろうことは想像に難くない。

しかし、経典のどれもこれもが釈尊の教え、仏説であるとの権威を
持って提示されていた訳であるから、安易に取捨選択するという
発想が生まれるはずもない。
そこで便宜上、先ずは総べての経典を仏説であるとして受け入れ、
矛盾するように見える諸経典を何とか工夫し、整理・体系化する
ことにしたのだが、5~6世紀の中国南北朝時代に行われた、
その判定方法を「教相判釈(きょうそうはんじゃく)」略して、
「教判(きょうはん)」という。
経典の内容が様々に相違しているのは、釈尊が教えを説いた
時期や内容が異なる為ではないかとの立場で、各宗派が
それぞれの判断基準に従って判釈し、独自の学派を形成した。

仏教各派が分立していた状況であるから、当然のこと、
判釈作業は判釈者自身の思想的立場、教学的立場から、
総べての経典、教説を統一的に位置付け、他派に対して、
自派の優越性を示す必要もあったに違いない。
現代とは違って、文献学的な手法を駆使出来ない、時代的な
制約下での解釈学的な知的作業であった訳である。

経巻B400

6世紀後半、隋の時代に、
天台大師智(てんだいだいし ちぎ)(538-597)は、
釈尊一代50年に於ける説法の次第や、教法の内容、教化の方法
などを判釈した「五時八教」という虚構の理論を考案した。
「五時」というのは、釈尊一代の化導を説法の順序に従って、
華厳時(けごんじ)、阿含時(あごんじ)、方等時(ほうどうじ)、
般若時(はんにゃじ)、法華涅槃時(ほっけねはんじ)の五期に
分類したものをいう。
驚く勿れ、この1400年も昔の虚構が現代の日本仏教界でも、
実しやかに語られ、教義の基盤として通用しているのである。



釈尊は、30歳の時に成道して、最初は21日間に渡り、
「華厳経(けごんぎょう)」を説いたといい、この時期を
「華厳時(けごんじ)」という。
ところが、この華厳時の説法は、釈尊が衆生の機根を計る為、
試しに高尚な教えを説いたもので、機根が熟していなかった
衆生は全く理解することが出来なかったので、それからは
初歩的な教えを説くことにしたという。
この華厳経を依経(えきょう)として、宗旨を立てたのが、
華厳宗である。

次に、釈尊は華厳経の説法をした後の12年間、機根の未熟な
衆生に対して、最も初歩的な阿含経(あごんきょう)を説き、
この時期を「阿含時(あごんじ)」という。
この阿含経を依経として宗旨を立てた宗派には、奈良仏教の
倶舎宗(くしゃしゅう)、成実宗(じょうじつしゅう)、
律宗(りっしゅう)などがある。

次の16年間(8年間説もある)、釈尊は、
「阿弥陀経(あみだきょう)」「大日経(だいにちきょう)」
「無量寿経(むりょうじゅきょう)」「維摩経(ゆいまきょう)」
「金光明経(こんこうみょうきょう)」など、数多くの経を
説いたとして、この時期を「方等時(ほうどうじ)」という。
これら方等時の経典を依経とする宗派には、浄土宗、
浄土真宗、真言宗、法相宗、禅宗などがある。

次の14年間(22年間説もある)、釈尊は、
「般若波羅蜜経(はんにゃはらみっきょう)」を説いたとし、
この時期を「般若時(はんにゃじ)」という。
ナーガルージュナ(竜樹)が著した般若経の注釈書、
「大智度論(だいちどろん)」「中論(ちゅうろん)」などを
依経として、宗旨を立てた宗派に、奈良仏教の三論宗がある。

釈尊は、72歳からの8年間、
「無量義経(むりょうぎきょう)」「法華経(ほけきょう)」を説き、
入滅に臨んでの一日一夜には「涅槃経(ねはんぎょう)」を説き、
この時期を法華・涅槃時(ほっけ・ねはんじ)という。
法華経を依経とする宗派には、天台宗、日蓮宗などがある。
涅槃経を依経とする宗派は、日本には無い。

経巻A400

このようなドラマチックなフィクションを拠り所として、
「法華経」こそが釈尊一代にわたる最勝の教えであると、
天台宗も日蓮宗も自宗の優越性を主張する訳であるが、
それは虚構の大義であって、歴史的事実ではないのだ。


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2011/10/09 11:26 | 日本仏教批判COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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