華やぐ日々よ …詠山史純の愚考拙文録 戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議 …昭和27年(1952年)12月の国会決議

戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議 …昭和27年(1952年)12月の国会決議

戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議 

           …昭和27年(1952年)12月の国会決議



第15回国会 衆議院本会議 第11号
昭和27年12月9日(火曜日)
 議事日程 第10号

戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議案(田子一民君外58名提出)

午後1時47分開議

○議長(大野伴睦君)
これより会議を開きます。

『戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議案』

○久野忠治君 
議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
すなわち、田子一民君外五十八名提出、戦争犯罪による受刑者の釈放等に
関する決議案は、提出者の要求の通り委員会の審査を省略してこの際
これを上程し、その審議を進められんことを望みます。

○ 議長(大野伴睦君) 
久野君の動議に御異議ございませんか。
    【「異議なし」と呼ぶ者あり】

○ 議長(大野伴睦君) 
御異議なしと認めます。よつて日程は追加せられました。
戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議案を議題といたします。
提出者の趣旨弁明を許します。田子一民君。


    【田子一民君登壇】
○ 田子一民君 
ただいま議題となりました、自由党、改進党、両社会党、無所属倶楽部の
共同提案にかかる戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議案、
右につきまして提案の趣旨弁明をいたしたいと存じます。
まず決議案の案文を朗読いたします。


田子一民A

 田子一民氏 (1881年-1963年) 岩手県盛岡市出身


「戦争犯罪による受刑者の釈放等に関する決議」


独立後すでに半歳、しかも戦争による受刑者として内外に拘禁中の者はなお
相当の数に上り、国民の感情に堪え難いものがあり、国際友好の上より遺憾と
するところである。

よつて衆議院は、国民の期待に副い家族縁者の悲願を察し、フイリツピンに
おいて死刑の宣告を受けた者の助命、同国及びオーストラリア等海外において
拘禁中の者の内地送還について関係国の諒解を得るとともに、内地において
拘禁中の者の赦免、減刑及び仮出獄の実施を促進するため、まずB級及びC級
の戦争犯罪による受刑者に関し政府の適切且つ急速な措置を要望する。
右決議する。

わが国は、平和条約の締結によつて独立国となつて、すでに半歳以上を
けみしておるのであります。
国民の大多数は、独立の喜びの中に、新生日本の再建に努力しております。
この際、このとき、この喜びをともにわかつことができず、戦争犯罪者として、
あるいは内地に、あるいは外地に、プリズンに、また拘置所に、希望なく
日を送つておりますることは、ひとり国民感情において忍び得ざるのみならず、
またさらに国際友好上きわめて遺憾に存ずるところであります。(拍手)

もとより、講和発効後、関係国の理解により、中国関係戦犯者九十一名の釈放、
米国関係十一名の仮出所、また近くは、インド、中国におきましては、戦犯者
のある部分につき釈放に同意したとのことでありまして、ここに諸君とともに、
これらの国に対しましては感謝の意を表するものであります。
さりながら、ひるがえつて他面を見ますれば、今もつて海外におきましては、
死刑の宣告を受けておりまする者五十九名を含む三百八名、これに内地在所者
を加えますれば、千百三十名になんなんとする多数の人々は、いまなお獄窓に
坤吟しつつあるのであります。実に私どもの黙視し得ざる点でございます。

そもそも戦犯による受刑者と申しまするものは、旧時代における戦争によつて
生じた犠牲者なのであります。
これらの人々は、和解と信頼による平和条約の発効の後におきましては当然
赦免せらるべきことを期待し、あきらめの態度を定め、従順かつまじめに服役
を続けて来ておるのであります。
しかるに、条約発効後すでに半歳以上をけみしましても、荏苒期待に反して、
そのことなきことは、私どもの遺憾禁じ得ざるところであり、関係者の失望と
焦燥とは察するに余りある次第でございます。
いわんや、その家族、縁者の物心両界にわたる苦痛は惨たるものあり、
生活の窮乏者さえ多いのであります。
これらの人々は、戦後七年間はもとより、また戦時中より通算しますれば
実に十数年の長きにわたつて家庭の支柱を奪われ、しかも今日までよく耐え、
よく忍んで来ましたゆえんのものは、一に講和条約が発効をしたならばとの
期待を持つたためなのであります。
しかるに、事期待に反し、その落胆、焦心は同情にたえざるところであります。
さらに一般国民は、戦争の犠牲を戦犯者と称せらるる人々のみに負わすべきで
なく、一般国民もともにその責めに任ずべきものであるとなし、戦犯者の助命、
帰還、釈放の嘆願署名運動を街頭に展開いたしましたことは、これ国民感情の
現われと見るべきものでございます。

およそ戦争犯罪の処罰につきましては、極東国際軍事裁判所インド代表パール
判事によりまして有力な反対がなされ、また東京裁判の弁護人全員の名に
おきましてマツカーサー元帥に対し提出いたしました覚書を見ますれば、
裁判は不公正である、その裁判は証拠に基かない、有罪は容疑の余地がある
という以上には立証されなかつたとあります。
東京裁判の判定は、現在あるがままでありましたならば、何らの善も生まず、
かえつて悪に悪を重ねるだけであると結論づけておりますことは、諸君の
すでに御承知の通りであります。
また外地における裁判について申し上げましても、裁判手続において十分な
弁護権を行使し得なかつた関係もあり、また戦争当初と事件審判との間には
幾多の時を費しまして、あるいは人違い、あるいは本人の全然関知しなかつた
事件もあると聞いておるのであります。

英国のハンキー卿は、その著書において、この釈放につき一言触れております
が、その中に、英米両国は大赦の日を協定し、一切の戦争犯罪者を赦免すべき
である、かくして戦争裁判の失敗は永久にぬぐい去られるとき、ここに初めて
平和に向つての決定的な一歩となるであろうと申しておるのであります。
かかる意見は、今日における世界の良識であると申しても過言ではないと
存じます。(拍手)

かくして、戦争犯罪者の釈放は、ひとり全国民大多数の要望であるばかりで
なく、世界の良識の命ずるところであると存じます。
もしそれ事態がいたずらに現状のままに推移いたしましたならば、処罰の実質
は戦勝者の戦敗者に対する憎悪と復讐の念を満足する以外の何ものでもない
との非難を免れがたいのではないかと深く憂うるものであります。(拍手)

今や、わが国は、世界平和確立に鋭意努力しております。
政府は、関係諸国に対し、まずB級及びC級を手始めとして、一日も早く
全部の赦免、減刑、仮出獄の処置に出るよう、迅速にして適切な方途を講じ、
一は国民感情の満足を求め、家族縁者の悲願にこたえ、一は国際友好の上に
遺憾なからしめるよう、強く要望してやみません。

はなはだ言葉足らず、意を尽しませんが、これ本案を提出するゆえんで
ございます。何とぞ満堂の諸君の御賛成を仰ぎたいと存じます。(拍手)


国会 畑


○ 議長(大野伴睦君) 
これより討論に入ります。館俊三君。

・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

○ 議長(大野伴睦君) 
これにて討論は終局いたしました。
採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。

【賛成者起立】

○ 議長(大野伴睦君) 
起立多数。よつて本案は可決いたしました。(拍手)



「衆議院会議録」より


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2013/06/03 17:42 | 歴史資料COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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