華やぐ日々よ …詠山史純の愚考拙文録 伊勢神宮正殿のシンプルな造形美…古代日本建築の究極的機能美

伊勢神宮正殿のシンプルな造形美…古代日本建築の究極的機能美

伊勢神宮正殿のシンプルな造形美 

        …古代日本建築の究極的機能美



20年に一度の式年遷宮(しきねんせんぐう)が進められている伊勢神宮では、
内宮(ないくう)と外宮(げくう)の正殿(本殿)が完成している。
大御神(おおみかみ)に新しい社殿へとお遷(うつ)り頂く「遷御(せんぎょ)」は、
内宮で10月2日、外宮で10月5日にそれぞれ執り行われる。
伊勢神宮の正式名称は単に「神宮」であり、皇大神宮(こうたいじんぐう)を
「内宮(ないくう)」、豊受大神宮(とようけだいじんぐう)を「外宮(げくう)」
と称する。
伊勢神宮は内宮と外宮の2つの正宮、14社の別宮、摂社、末社、所管社等125 社
の集合体で成り立っており、これらの宮社は、伊勢市内とその近郊(松阪市・
鳥羽市・志摩市・度会郡など)に鎮座遊ばされている。
式年とは定められた年を意味し、神宮には内宮、外宮共にそれぞれ、東と西に
同じ広さの敷地があり、20年に1度同じ形の社殿を交互に新しく造り替える。
式年遷宮では社殿だけでなく、714種・1576点の御装束・神宝も新調される。


式年遷宮11

図解 式年遷宮

空撮 内宮5


内宮と外宮の正殿(本殿)は、「神明造り(しんめいづくり)」という、
出雲大社の「大社造り」と共に、日本最古の工法で建築されている。
(特に、内宮正殿の様式を「唯一神明造り《ゆいいつしんめいづくり》」と呼ぶ)
私は、簡素にして、如何にも原始日本的な様式の神社建築が好きである。
7世紀の後半ともなれば、当時としては最新の仏教寺院建築の様式も伝わって
来ていたはずであるが、伊勢神宮の社殿に弥生時代からの伝統的な建築様式が
用いられたことを嬉しく思う。


内宮y
内宮新正殿

外宮3
外宮新正殿

外宮2
外宮新正殿の高欄

内宮正殿1
内宮新正殿の正面階段


正殿の柱は地面に穴を掘って、そのまま埋め立てる土台の無い丸い掘っ立て柱、
両妻に棟を持ち上げる直径79cmの太い棟持柱(むなもちばしら)が立ち、
高床式で床下が高く、屋根は萱葺き(かやぶき)、全てが檜(ひのき)の素木
(しらき=白木)造り。
正面三間、側面二間の大きさで、正面には階段、周囲には高欄付きの縁が
巡らせてある。
屋根の形状は、大棟から両側に流れる二つの斜面から出来ている山形の屋根で、
反りの無い直線的な切妻造り(きりづまづくり)の形式である。

神社の本殿様式は、古代の住居から発展した「妻入り型」と、穀物倉庫から
発展した「平入り型」に大別される。
この分類は社殿の出入り口の位置の違いに依るもので、屋根の頂部である棟と
平行の側面に出入り口が設けられた建物が「平入り型」で、棟に対して垂直
な側面に出入り口が設けられた建物は「妻入り型」と呼ぶ。
古代の高床式の穀物倉庫を原型としている伊勢神宮の正殿は、平入り型である。
因みに、出雲大社は妻入り型である。


平入り妻入り1

天地根元造 図解
天地根元造り


神社建築では、屋根に千木(ちぎ)と堅魚木(かつおぎ)があるのが特徴である。

千木とは、屋根の両端部で、屋根を突き破ったように二本の破風板(はふいた)
の先端が棟の所で交差して突き出ているV字形の部分のことである。
この千木の起源は単なる装飾材ではなく、原始的な建築に必要な様式であった。
天地根元造り(てんちこんげんづくり)という古代の建築様式で、木造建築で
小屋を組む構造材である垂木(たるき)を2本交差させたものを2組作り、
建築する小屋の両端に立てて、その垂木の交差した2点に棟木を掛け渡すと、
棟木と接した位置から上の垂木は屋根よりも高くなる訳で、この高く突き出た
部分が千木なのである。
神明造りの千木は、この天地根元造りの垂木に相当する破風板を伸ばしたままの
古い形式を伝えていることになる。

千木は、古くは「比木(ひぎ)」「氷木(ひぎ)」とも呼ばれていたという。
千木の語源には「茅屋(ちや)の木」、或いは「違い木」の音が詰まったもの
との説がある。
また、千木の千の音「ち」は、東風(こち)や疾風(はやち)の「風(ち)」で、
「風木(ちぎ)」が語源ではないかとの説もある。
千木には強い風を避ける為に、幾つかの風穴が空けられている。

千木の先端が地面と水平に切られているのを「内削ぎ(うちそぎ)」と呼び、
千木の先端が地面と垂直に切られているのを「外削ぎ(そとそぎ)」と呼ぶ。
内宮(皇大神宮)の千木は内削ぎで、外宮(豊受大神宮)の千木は外削ぎの
形状にされている。

一般的に、千木が「内削ぎ」であるのは、「女神」を祀っていることを示し、
「外削ぎ」であるのは、「男神」を祀っていることを示すと言われているが、
明治時代の神社の合祀政策に依って、複数のご祭神が祀られているケースの
多い現状では、一概にそうとは言えないと思われる。


内宮s

千木と鰹木8

千木と鰹木 内宮と外宮の相違


堅魚木とは、千木と千木の間の棟木の上に、棟木に対して直角に並べられた
棒状の木のことで、形が鰹節に似ていることから、「鰹木(かつおぎ)」と
名付けられたという。
「勝魚木(かつおぎ)」、「葛緒木(かつおぎ)」とも書く。
堅魚木も千木同様に、現在では装飾材とされているが、本来は萱葺きの屋根の
防風を目的とした押さえの役割を果たす実用的なものであったという。

内宮の正殿と外宮の正殿、その規模や形状はほぼ同じであるとのことであるが、
堅魚木の数は内宮と外宮とでは異なり、内宮正殿の屋根には10本、外宮正殿の
屋根には9本が載せられている。
一般的に、堅魚木が「偶数本」であるのは、「女神」を祀っていることを示し、
堅魚木が「奇数本」であるのは、「男神」を祀っていることを示すとされているが、
これも千木の内削ぎと外削ぎの違い同様に、一概には言えないと思われる。


内宮l





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2013/09/18 05:10 | 天神地祇COMMENT(0)TRACKBACK(0)  TOP

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