占いの歴史夜話⑰…ドイツ・イギリス占星術戦争

 2016-11-26
占いの歴史夜話⑰ 

…ドイツ・イギリス占星術戦争



2008年(平成20年)、イギリス公文書館が公開した第2次世界大戦中の機密文書で、
イギリス軍のスパイ部隊を指揮した特殊作戦執行部(SOE)が第2次世界大戦中に
ハンガリー人の占星術師ルイ・ド・ウォール(Louis de Wohl ,1903-1961)を
雇っていたことが明らかになり、日本でも報道された。

この機密文書はイギリスの情報機関であるM16(軍情報部第6課)のもので、
007シリーズのジェームズ・ボンドはM16の諜報部員という設定であることから、
映画ファンにとっては有名な秘密情報部であろう。
イギリス軍が占星術師のアドバイスを受けていたことは以前から語られていた
ことであるが、イギリス政府が公式にその事実を認めたのは初めてであった。


第17記事1
Louis de Wohl(1903-1961)


ド・ウォールは処世術に長けた相当に強かな人物であったらしく、ヒトラーの
ナチスドイツに依るユダヤ人迫害が激しくなる前にイギリスに移住し、自分は
ハンガリー貴族の子孫であり、「現代のノストラダムス」と言われるほどに
有名な占星術師であると自らアピールすることで、上流社会の人々と交流し、
イギリス政府に注目されるようになったと言われている。

「あのような危険なペテン師を雇うとは信じがたい」との政府高官の批判も
一部にはあったものの、SOEはド・ウォールを最高の占星術師であると評価し、
陸軍大尉の階級を与え、その助言を珍重していたということである。
ヒトラーの顧問であった占星術師カール・エルンスト・クラフトがどのような
アドバイスを行なっているか予測出来れば、ドイツの軍事作戦を逆解読出来る
はずということで、実際にクラフトの立てる占星術的な戦略を次々と解読し、
イギリス軍の勝利に貢献したと言われている。

ド・ウォールはドイツ国民の戦意喪失を目的に、ノストラダムスの予言は
「連合国の勝利を予言している」と解釈した宣伝ビラや占星術雑誌、映画など
を作成し、プロパガンダ戦で活躍した。
また、厭戦気分の蔓延していたアメリカに派遣され、「ヒトラーの軍事行動が
予測出来る為に、必ず勝利出来る」と主張し、アメリカ国民にヨーロッパ戦線
への参戦を訴え掛けるなど、活発に活動したとのことである。


第17記事2


1939年(昭和14年)、スイス生まれの占星術師カール・エルンスト・クラフト
(Carl Ernst Kraft,1900-1945)は鑑定依頼された訳ではないにも拘わらず、
余計なお世話でアドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler, 1889-1945)のホロスコープを
作成した結果、11月7日から10日の間に暗殺の危険があると解読、その旨を
国家保安本部(RSHA)に通報した。
ヒトラー暗殺未遂事件は40回以上もあったと言われているが、クラフトの
その予言は見事、11月8日に現実化した。
クラフトの予言が余りにも正確な予知であったことから、実行犯の関係者かと
疑われ、ゲシュタポ(ドイツ国家秘密警察)に逮捕された。

この一件で、クラフトは優秀な占星術師と認められ、ドイツ宣伝省の職員に
採用されることになった。
宣伝省の大臣は、プロパガンダ(政治的意図の下に主義や思想を強調する宣伝)に
天才的な才能を発揮したパウル・ヨーゼフ・ゲッベルス(Paul Joseph Goebbels,
1897-1945)であった。
ノストラダムスに関心を抱いていたゲッペルスは、ノストラダムスの予言で、
「ドイツの勝利が予言されている」と宣伝することを思い付き、その予言解釈を
クラフトに命じた。


第17記事3
Paul Joseph Goebbels(1897-1945)

第17記事6
Adolf Hitler,(1889-1945)&Paul Joseph Goebbels(1897-1945)


そして、クラフトはナチスドイツに都合の良い解釈を行った「如何にして、
ノストラダムスはヨーロッパの未来を予見したか」という本を書いた。
この「ノストラダムスがドイツの勝利を予言している」という内容の本や
宣伝ビラがイギリス、フランス、アメリカと連合国にばら撒かれたことから、
イギリス政府はルイ・ド・ウォールを雇って、対抗したという訳である。


第17記事4
Carl Ernst Kraft(1900-1945)


ドイツ軍の作戦の決行は、クラフトの選んだ吉日に行なわれたとまで言われて
いるほどにクラフトは重用されていたが、当然のことながら、正しく占星術で
占えば、ドイツの敗戦を予知出来ていた訳であるから、クラフトは停戦を
呼び掛けるなど、ドイツ政府の望むような占い結果を出さなくなって行った。
その後は占星術師たちへ大規模な迫害が加えられるようになり、クラフトは
1943年2月、Leherterstrasse刑務所に投獄され、3月に発疹チフスに感染。
その後、Oranienburg強制収容所に移され、1945年1月、栄養失調で死亡とのこと。
クラフトの最後の予言は「ドイツ宣伝省は、その卑しむべき行為の罰として、
連合国の爆撃を受けるだろう」というもので、その予言はベルリン大空襲に
よって的中したことになる。

神なるものからのサインを解読する言語とも言える、神聖な行為であるべき
占術を悪用し、人を欺いてはいけないということである。


第17記事5
ベルリン陥落



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